投稿日:2009年10月29日 17:12 カテゴリ:業務拡大のタネ
製品ライフサイクル理論(プロダクト・ライフサイクル理論)という言葉をご存知でしょうか。ある製品が世に出てから消えていくまでの過程を4つの段階に分けて説明したもので、以下のような段階を踏むとされています。
上記の定義にあてはめてみると、携帯電話業界は成熟期、薄型テレビ業界は成長期から成熟期といったところでしょうか。弁護士の間でも利用が広がっているiPhoneは、導入期から成長期に入ったといえるかもしれません。このように、製品ライフサイクル理論は、個々の製品・サービスだけでなく、業界の分析にも広くあてはめることができます。
では、法律業界にあてはめて考えてみると、どこに位置するでしょうか?業務分野ごとに考えると、債務整理はすでに成熟期から衰退期に向かっているといえそうです。業界全体としては、弁護士人口の急増に伴い、「独立しても何とかやっていける」という成長期から、事務所間の競争が激しくなる成熟期に移行しつつあるというのが大方の見方ではないでしょうか。
成熟期におけるマーケティング戦略としては、ブランド化、差別化を行い、「他とは違う」ことをアピールすることが重要とされています。さらに、成長期のように、ある顧客が離れていっても別の顧客を探せばいい、というわけにはいかなくなりますので、一度つかんだ顧客を離さないために、ロイヤリティ(信頼・愛着)を高める必要があります。
法律事務所に即して考えると、「○○なら××法律事務所」というイメージを持たせることがひとつの方法でしょう。前回の記事に対して、専門性について、それを客観的に担保するための制度(認定制度等)がない現状において、いわば「言った者勝ち」になってしまう危険があるというご指摘を受けました。そのご指摘はもっともで、知識も経験もない弁護士が「○○が専門です」と看板を掲げることで、取り返しのつかないことになっては目も当てられません。
ただ一方で、幅広い経験を積んだ弁護士が取扱業務の中で特定の分野を重点的に取り扱っていることをアピールすることは、利用者にとってもわかりやすく、弁護士にとってもある程度専門性を高めていけるというメリットがあるでしょう。実際に取り扱う業務が多岐にわたるとしても、「見せ方」として分野を絞るのはマーケティングのテクニックとして認められると思います(「経験を積んだ弁護士」か「知識も経験もない弁護士」かを区別する方法がないことが、まさに問題なのですが…)。
ロイヤリティの向上については、事務所報の発行などが考えられますが、基本的には「きちんと仕事をする」ことに勝るものはないのでしょう。他業種では、リピーターに対する割引や利用者を会員登録し、組織化することなどが行われていますが、法律事務所では実行しにくいかもしれません。
ここまで、法律業界が成熟期にあることを前提にお話をしてきましたが、業界全体としてはそうでも、個々の分野、利用者層、地域でみると、成長期どころか導入期のものも少なくありません。需要の創出のために、法律事務所・弁護士から、わかりやすいメッセージを発信し続けることも大切ではないかと思います。Twitter を利用されている弁護士の皆さんは、とてもわかりやすく、また生々しくメッセージを発信し続けています。参考にされてはいかがでしょうか。
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