投稿日:2009年10月 1日 11:59 カテゴリ:法律事務所の立地論
法律事務所の立地について考える記事の3回目です。
前回は「駅」にスポットを当てて検討しましたが、駅の乗降客数だけでは、自動車を利用することが多い地域の実態を把握できませんし、勤務先に向かう人が乗車するために利用することが多いのか、自宅に帰る人が乗車するために利用することが多いのか判断できません。そこで別の判断基準を考えることにします。それは、昼間人口・夜間人口です。
昼間人口とは、「常住人口に他の地域から通勤してくる人口を足し、さらに他の地域へ通勤する人口を引いたもの」のことをいい、夜間人口とは、常住人口のことをいいます。両者の人数や比率(昼夜間人口比率)を確認することで、その都市の性格がわかります。
2005年に実施された国勢調査の結果から、昼夜間人口比率の上位・下位を挙げると以下のようになります(常住人口10万人以上の都市)。
都市名 | 昼夜間比率(昼間人口/夜間人口)(%) |
---|---|
東京都港区 | 489.4 |
大阪市北区 | 430.4 |
東京都渋谷区 | 272.4 |
東京都新宿区 | 253.5 |
神戸市中央区 | 243.1 |
札幌市中央区 | 194.7 |
広島市中区 | 194.6 |
福岡市博多区 | 192.3 |
東京都台東区 | 185.6 |
横浜市中区 | 182.9 |
都市名 | 昼夜間比率(昼間人口/夜間人口)(%) |
---|---|
川崎市宮前区 | 70.1 |
埼玉県富士見市 | 70.4 |
千葉県流山市 | 72.0 |
さいたま市南区 | 72.2 |
横浜市泉区 | 73.5 |
横浜市栄区 | 73.5 |
千葉県鎌ケ谷市 | 73.9 |
神戸市垂水区 | 74.0 |
川崎市麻生区 | 74.6 |
横浜市青葉区 | 75.1 |
では、この結果をどのように立地検討に利用すべきなのでしょうか。
昼間人口が多いということは、その都市に通勤してくる人が多いということですから、勤務先となる企業の数も多いといえるでしょう。企業法務を専門にしようと考えるのであれば、昼夜間人口比率が高い都市を選ぶのがよいでしょう(より正確には事業所数の統計(事業所・企業統計調査)にあたるべきでしょうが)。また、市民向けの法律事務所が昼夜間人口比率の高い都市を選ぶのであれば、昼休みの時間や仕事が終わった後の夜間に相談ができるようにすれば、利用しやすくなるでしょう。
逆に昼夜間人口比率が低い都市は、夜間や休日の相談対応を強化すれば、市民にとっては利用しやすくなります。また、昼夜間人口比率が低く、かつ定住人口が多い都市というのは、働いていない人(女性・高齢者)が多いともいえますから、そういった人を対象としたサービスの提供も考えられるかもしれません。
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次回は立地論のまとめをしたいと思います。
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