投稿日:2009年7月15日 13:48 カテゴリ:法律事務所命名考
前回は、法律事務所に地名を入れることのメリット・デメリットについて書きました。法律事務所も、看板を掲げていればクライアントが集まってくる時代ではなくなっていますし、ターゲットを絞ってマーケティングをしなければなりません。その切り口のひとつとして、前回は地名を取り上げたのですが、今回は専門色を法律事務所名に入れることのメリット・デメリットについて考えたいと思います。
地名と違って、専門色を法律事務所に入れるのはだいぶストレートなやり方です。その分、メリット・デメリットもわかりやすく、メリットは、掲げた分野に精通しているというイメージを持ってもらいやすいことですし、デメリットは、掲げていない他の分野について依頼しようと思ってもらえない(少なくとも最初の時点では)ことです。
医師を例にとって考えるとわかりやすいと思います。骨折をした人は「○○外科」には行きますが、「○○内科」に行くことはまずありません。医師は、国家試験に合格すれば、すべての診察科について診察をすることができます。内科の医師が外科を診ることができないかといえば、そんなことは(少なくとも法律上は)ありません。しかし、看板にそのように掲げられていれば、その医師の技術の有無にかかわらず、骨折した人は外科に行くのです(もしかしたら、内科の医師の中に外科の専門医レベルの技術を持つ人もいるかもしれないのに!)。
弁護士も資格を得れば、民事でも刑事でも家事でも事件を扱うことができますが、やはり得意とする分野、専門的に勉強している分野があり、民事を中心に扱っている事務所では、刑事事件の依頼があっても原則として受任しないようです。であるならば、「○○民事法律事務所」とか「○○刑事法律事務所」があってもよいと思うのですが、現在のところ、そのような事務所はないようです。
現在、専門色を法律事務所名に出しているのは、税理士の資格をもった弁護士が在籍している「会計」「税務」法律事務所や弁理士の資格を持った弁護士が在籍している「特許」法律事務所が大半です。その他の専門色を出した法律事務所名としては、以下のようなものがありました(カッコ内は事務所数。「国際法律特許事務所」は「国際」と「特許」それぞれにカウント)。
特徴的なのは、「女性」と「子ども」でしょうか。「女性」や「子ども」は、人の持つ属性であって専門分野ではありませんが、ターゲットの絞り込みとしては効果的だと思います。現在のところ、「女性」が付いた法律事務所は、女性共同法律事務所(大阪)、女性の法律事務所パール(滋賀)、弁護士法人女性協同法律事務所(福岡)の3か所、「子ども」が付いた法律事務所は、獨協地域と子ども法律事務所(埼玉)のみとなっていますが、今後、これらの名前を持つ法律事務所も増えていくのではないでしょうか。
また、医療機関には、「メンズクリニック」がありますが、現在のところ、男性専用をうたった法律事務所は存在しないようです。意外な狙い目かもしれません(男性特有の悩みというものもあるでしょうし)。
次回は、これまでの話のまとめとして、法律事務所の理想の名前について考えてみたいと思います。
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