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投稿日:2009年7月29日 17:28  カテゴリ:法律事務所命名考

法律事務所で避けるべき名前

 今回は法律事務所で避けるべき名前について、考えてみたいと思います。

 まず、設立者の氏名が入った事務所名は避けたほうがよいでしょう。第2回でも書いたように、氏名入りの事務所名は同名の事務所が登場する可能性があり、事務所というブランドを他の事務所と区別する機能(商標でいうところの識別機能)に欠けるといえます。また、法律事務所を「公器」と考えるならば、自分が引退した後でも通用する名前を付けるべきでしょう(通常の法律事務所は法人ではないので、いわゆる「法人=公器」論が成立しにくいかもしれませんが)。

 次に、読みにくい・書きにくい・発音しにくい事務所名も避けるべきでしょう。

 難読の漢字だけでなく、読み方を悩むような事務所名も避けるべきです。電話で問い合わせをしようというときに、読み方がわからないと電話を躊躇します。どうしてもかける必要がある場合は「間違ってもいいや!」と腹をくくって電話をするでしょうが、他に選択肢があるのであれば「名前を間違えるような失礼をするのなら、他をあたろう」となるのが心情でしょう。電話を受ける側も、「いや、うちは○○と読むんです…」とはなかなか言えず、お互い気まずくなること請け合いです。

 書きにくいには、パソコンで入力しにくいを含みます。異字体(「さい」であれば、「斉・斎・齊・齋」、「なべ」であれば、「辺・邊・邉」など)は、誤変換を招きやすいですし、「高」や「崎」の異字体は、一部のソフトでは入力できるものの、対応していないソフトでは文字化けを起こします。これらも避けるべきでしょう。
 異字体を使われている方のこだわりは理解できるのですが、正しく書かれていないときのストレスも無視できませんので、そういった文字の使用を避けるか、ひらがなにしてしまったほうがよいと思います。

 最後の発音しにくいは、読みにくい・書きにくいとも関連すると思いますが、「ブ」と「ヴ」の区別をはじめ、声に出して読みにくい(滑舌が悪いと読めない)事務所名は、電話を取るたびに事務所名を名乗る事務職員さんのためにも避けたほうが無難でしょう。

 ここまで書いたことを「冗談でしょう」「大げさな」と思われる方がいるとしたら、マーケティングの観点からは失格と言わざるを得ません。事務所の名前は、設立者のためのものだけでなく、それを使うであろうすべての人のためのものです。目で読み、声に出して読み、読まれたものを聞き、手で書き、パソコンで入力し、さらに書かれたものを見て、違和感がないか確認するくらいのこだわりが必要だと思います。
 法律事務所を「公器」と考えるのであれば、その名前は人が変わっても受け継がれ、10年、30年、50年と使われていきます。独立時には、他にも考えるべきことがたくさんあり、名前だけにこだわっている余裕がないのも確かですが、遠い未来に思いをはせて名前を付けるのもよいのではないでしょうか。

 予告では、法律事務所の理想の名前について書くつもりでいましたが、「べからず」の部分でかなりの分量になってしまいましたので、次回こそ理想の名前について書きたいと思います。

 

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