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投稿日:2010年3月11日 12:51  カテゴリ:その他

仕事がない?

 史上初の再選挙となった日弁連の会長選挙ですが、宇都宮健児弁護士が総得票9720票で、現副会長の山本剛嗣弁護士を破り当選しました。

 現体制の後継と目されていた山本弁護士を破っての当選ですから、かなりインパクトのある「事件」です。普段はマスコミでもあまり取り上げられない会長選ですが、今回は日経の社説に取り上げられるほどの注目ぶりでした。

 今回の争点の一つは、弁護士人口の増員問題だったといわれています。司法試験合格者を1,500人程度(現在は新旧あわせて2,100人程度)に削減するという明確な数値を掲げた宇都宮弁護士への支持が集まったとされています。

 弁護士人口の増員問題については、2つの観点があり、両者は明確に区別されるべきだと思います。1つは弁護士人口の総数が増えるということ、もう1つは新人弁護士の人数が増えるということです。

 このうち、後者の問題については、理解できるところがあります。司法試験合格者のうち、裁判官、検察官となるのは、あわせて200人くらいですから、現在の合格者の水準でいくと、毎年1,800人の新人弁護士が誕生することになります。これまで、新人弁護士は法律事務所に就職し、そこで数年のイソ弁生活を経て、実務経験を積んできました。公認会計士のように、実務経験を積まなければ資格そのものが得られないというわけではありませんが、多くの弁護士はそのような過程を経てきたのです。

 現在、弁護士は全国に28,828人います(2010年3月1日現在)。その29,000人弱の弁護士が1,800人の新人を受け入れ、教育するということは、「先生役」を後から増やすことができないのに、生徒が急増するというわけですから、教育が破綻するというのは、理解ができます。ですから、例えば、新人弁護士の増加人数を、既存の弁護士人口の5%にとどめる(つまり、弁護士20人で1人の新人を育てる)ということであれば、(5%という数字の是非はともかくとして)「なるほど」といえなくもありません。

 しかし、前者の問題、つまり、弁護士の人数自体の増員を抑制する、というのであれば、疑問を持たざるを得ません。仕事がなくなるのではないか、というのは、現状では杞憂だと思うからです。

 まだまだ、弁護士過疎の地域がたくさんありますし、弁護士の話を聞く限りでは、みな手持ちの事件で手一杯だといいます。もちろん、外部の人間に聞かれて、「仕事がなくて不安だ」という人はいないでしょうが、実際、アポイントを取ろうにも取れない弁護士が多いことを考えると、やはり忙しいのだろうと思います。

 「忙しいのに儲からない」というのであれば、単価を引き上げる、効率を高める、経費を減らすなどの工夫も必要でしょう。また、1人あたりの手持ち事件数を減らすことは、マイナスだけではないと思います。依頼者に向き合う時間が増えることで、サービスの質を高められるでしょうし、そうすることで、事件放置による懲戒も減り、業界全体の信頼度向上にもつながります。さらにいえば、これまで目を向けられなかったターゲットにアプローチすることもできるようになるのではないでしょうか。日弁連が実施した「中小企業の弁護士ニーズ全国調査」(調査結果編分析提言編)をみても、弁護士を利用していない中小企業が半数程度います。こうした層をうまく発掘できれば、大きな市場となるのではないでしょうか。

 確かに、これまでのように、種をまき(交流会への参加)、肥料を与え(人間関係の構築)、天候(好不況、過払いのような新たな業務分野の「発見」)に左右されながら顧客を獲得してきた農耕的顧客獲得手法では、今後難しいかもしれません。全面的に狩猟的顧客獲得手法に移行するのは、かえって安定感を失いますが、「半猟半農」くらいのバランスに移ってもよいのではないかと思います。

 

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