投稿日:2010年4月16日 19:47 カテゴリ:その他
日弁連の会長に宇都宮弁護士が就任し、重点政策として、
(1)弁護士人口の増加に歯止めをかける(裁判官、検察官の増員には反対していないことから、「法曹」人口の増加反対、ではないと思われます)
(2)司法修習時の給費制の維持
などを掲げています(詳細については、2010年度会務執行方針をご覧ください)。
給費制維持については、日弁連内部に対策本部が設置がされたことで、報道もなされ、今日の Twitter でもかなり話題になっていました。
給費制維持派は、ロースクールの費用も含め、給費制を廃止した場合には、
という主張をしています。
これに対して、給費制でなくてもよいのではないかという人たちは、
という主張をしています。
給費制維持派の主張のうち、人権擁護のための活動がおろそかになるという部分については、現状においても刑事事件をはじめとする「カネにならない事件」をやらない事務所が相当数存在することからすれば、それほど変わらないのではないかとも思います(逆に、人権擁護のための活動をしている弁護士に対する経済的支援は必要だと思いますが)。
これに対して、「弁護士は金持ちだ」という主張については、正直判断がつきません。
日弁連が毎年発行している「弁護士白書」の2009年版によると、弁護士の所得(収入から経費を引いたもの)について、経験年数が5年未満の弁護士は500万円未満が最多回答(30.4%)となっています。以下、経験年数別にみていくと、5年目以上30年未満までの弁護士は1000~1500万円未満が最多回答となっています。
これをみる限り、「毎年1000万円以上稼いでいるのだからいいじゃないか」ということになりそうです。しかし、このアンケートに回答したのが、日弁連の会員約2万7000人のうち、わずか4,637人に過ぎないという点は軽視できないと思います。
この手のアンケートは、所得という他人に知られたくない内容だけに、「他と比べて自分はそこそこもらっている」という人しか回答しません。したがって、実態を正確に表しているとは限らないのです。
Twitter でも、「実態を正確に伝えるために、調査に協力しよう」という弁護士の書き込みがありましたが、その通りだろうと思います。これまで、弁護士は世論を味方につけて自分たちの望む方向に持っていくということができていなかったと思います。「弁護士の重要性について、世間はわかってくれているはずだ」ではなく、なぜ必要か、何について困っているのか、もっとオープンにすべきなのだろうと思います。弁護士へのアクセスひとつ取っても、裁判所の近くにある事務所まで出向かなければならない現状では、理解は得られないでしょう。
独立した自営業者の集まりであるだけに、日弁連が旗を振るだけで大きく変わるということはないのでしょう。だからこそ、個々の弁護士がもっと考える必要があるのではないでしょうか。
最後に少しだけフォローをしますと、「弁護士白書」のような年度版の資料を作成しているのは、実は弁護士だけです。司法書士や行政書士については、年度版どころか、まとまった統計集さえ公開されていません。それゆえに、弁護士という職業に対する「夢」の部分だけでなく、「現実」もまた、市民にきちんと知ってもらうべきだと思うのです。
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