投稿日:2009年11月 5日 19:39 カテゴリ:Webマーケティング
前回まで、「法律事務所も商品開発をすべき」「法律事務所の差別化・ブランド化を」という話をしてきましたが、そういった戦略をとる際に有効に活用したいのがホームページです。このような話はすでに使い古されていますが、意外に見落としがちなポイントが2つあります。
1つは日弁連の「弁護士の業務広告に関する規程(以下、広告規程)」と、その運用指針である「弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針(以下、運用指針)」です。
これらの規程によると、専門分野と得意分野の表示については、
(略)専門性判断の客観性が何ら担保されないまま、その判断を個々の弁護士に委ねるとすれば、経験・能力を有しないまま専門家を自称するというような弊害もおこりうる。
従って、客観性が担保されないまま「専門家」、「専門分野」の表示を許すことは、誤導のおそれがあり、国民の利益を害しひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあることから、現状ではその表示を控えるのが望ましい。専門家であることを意味するスペシャリスト、プロ、エキスパート等といった用語の使用も同様である。
(略)弁護士間においても「専門家」の共通認識が存在しないため、日本弁護士連合会の「専門」の認定基準または認定制度を待って表示することが望まれる。
とされており、現状において、「専門分野」あるいは「○○の専門家(スペシャリスト)」という表示は、できないと考えるべきでしょう(メディア等での紹介文で「専門家」と書かれることは問題ないでしょうが)。
「得意分野」については、「その表現から判断して弁護士の主観的評価にすぎないことが明らかであり、国民もそのように受け取るものと考えられるので許される。」とされていますが、こちらについても、経験を伴わない得意分野の表示による誤導を防ぐため、「重点取扱分野」「関心のある分野」という表記が望ましいとされています。
他方、過去に取り扱った事件については、依頼者の同意がある場合のほか、「広く一般に知られている事件で、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合」「依頼者が特定されない場合で、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合」には、広告として利用できるとされていますので、専門性をアピールできるようなコンテンツと過去の事例を組み合わせるのが、無難な方法といえます。
もう1つのポイントは、事務所や弁護士についての情報をきちんと掲載することです。広告規定にも、広告中にその氏名及び所属弁護士会を表示しなければならないと定められていますが、それにとどまらず、弁護士のプロフィールなどについてもスペースを割くべきです。
最近では法律事務所のホームページの中にも、かなり宣伝色が強く、一見してどの事務所が運営しているかわからないものが増えてきました。「とがった」内容にすれば、その分、アピール度も高く、検索結果でも上位に表示されることになりますが、そこから問い合わせ・依頼というステップを踏ませるには、やはり弁護士や事務所の信頼性をアピールする必要があると思います。
最後に、広告規程の中に意外な規定を見つけてしまいましたので、ご紹介したいと思います。「広告をした弁護士は、広告物又はその複製、写真等の当該広告物に代わる記録及び広告をした日時、場所、送付先等の広告方法に関する記録並びに第四条第二号ないし第四号の同意を証する書面を当該広告が終了したときから三年間保存しなければならない。」という規定がそれです。運用指針によると、「インターネットのホームページを利用した広告の場合は、その内容が頻繁に書き換えられるのが通常であるから、画面の一新や掲載内容の大幅変更・改訂がない場合は保存する必要はないが、そのような変更があった場合には書き換え前のデータを保存しておく必要がある。保存の方法は、データ以外にプリントアウトした紙での保存も可能である。」とされていますが、果たして実行できている事務所がどのくらいあるのでしょうか…?
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