鈴木・佐藤法律事務所は、60代の鈴木弁護士と30代の佐藤弁護士の共同事務所である。もともと鈴木弁護士の個人事務所だったが、新人弁護士として入所した佐藤弁護士が2年前からパートナーとなり、共同事務所となった。
佐藤弁護士のパートナー就任後、案件獲得の機会を広げるため、ホームページを開設するなど、外部への情報発信に力を入れ始めたが、これまでのところ、目立った効果は出ていない。
目下のところ、案件数は横ばいだが、今後のことを考えると、何らかの対策をしなければならないと佐藤弁護士は考えている。そこで、集客のための活動について、調べてみることにした。
集客のための活動としては、(1)マーケティングと(2)営業がある。マーケティングが「商品やサービスを購入してもらうための動機の形成」に力点が置かれるのに対して、営業は「商品やサービスの購入を決断する後押しをする」ことに力点が置かれる。
(マーケティングと営業の比較)マーケティング | 営業 | |
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目的 | 商品やサービスを購入してもらうための動機の形成 →興味・関心を持ってもらい、「使ってみようかな」と思わせる |
商品やサービスの購入を決断する後押しをする |
対象 | 一般には不特定多数 | 特定少数 |
費用 | 対象を広げると高額になる | 営業スタッフの人件費が中心 |
特徴 | 画一的なものになりがち | 相手に合わせてきめ細かい対応が可能 |
営業という業務に対しては、「うまいことを言って興味のないものまで買わせようとする」「しつこい」といったイメージを持たれがちである。
確かに、以前はそのような力押しの営業でも成果が上がっていた。しかし、売り手と買い手の間の情報格差が縮まり、モノがあふれる現代社会においては、買い手も営業トークに騙されなくなっているし、どんなにしつこくされても、必要のないものは買わなくなっている。つまり、上記のような営業スタイルでは、売れなくなっているのである。
現在では、営業スタッフの仕事は「ニーズの実現のサポート」が中心となっている。つまり、買い手がもともと持っているニーズを引き出し、それに合わせた提案をすることで、買い手のニーズの実現をサポートすることが中心となっているのである。
佐藤弁護士は、いきなり企業と同じような営業活動を行うのは難しいと思いながらも、法律事務所なりの営業をやってみようと考えるようになっていた。