営業は、商品やサービスを欲しい人を探すことからスタートする。手当たり次第に電話をかけたり、訪問をしても、効率は上がらないため、誰に対してアプローチをするのかをまず考える必要がある。
アプローチ先を考えるにあたっては、いくつかの方法がある。
以下、それぞれの方法について説明する。
依頼者は誰か? | 依頼者の必要性・困りごと・不安は何か? | 提供したサービスによって受けたメリットは? |
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A市の不動産管理業者 | 賃料の不払い | 賃料の回収 |
A市の貸しビル業者 | 原状回復費用でテナント側と調整がつかない | 依頼者側に有利な条件で和解成立 |
B市の貸しビル業者 | 賃貸借契約書の見直しをしたい | トラブルを未然に防げる安心感 |
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(共通点は) A市を中心とした不動産賃貸関連業 |
(共通点は) 事後的なトラブルへの対応 |
(共通点は) トラブル解決 「弁護士に任せたから大丈夫」という安心感 |
どの業務分野に的を絞るかを考えるにあたっては、
という2つの側面から検討すべきである。
「市場性分析」とは、案件数と報酬回収の容易さを軸として、分析する方法である。
佐藤弁護士は、過去のクライアントの中に中小の製造業が多いことに気付いた。彼らの中には独自の技術を持っていながら、親事業者の無理な要求を飲まされているところも少なくない。彼らに対して、下請法対応と知的財産保護をサービス内容として提案できないだろうかと考えるようになった。
選定したターゲットのリストを作成する。アプローチ方法にもよるが、社名と連絡先(住所・電話番号・FAX番号・メールアドレスのうち、1つ以上)は最低限必要である。加えて、従業員数や売上高、資本金などがわかると、アプローチの優先順位の決定に役立つ。
ターゲットの件数は、アプローチの方法・頻度にもよるが、1回限りのアプローチではなく、継続的にターゲットにアプローチし、信頼関係を構築していくことを目指すのであれば、フルタイムの営業スタッフ1人につき1,000件程度が妥当である。
他の業務との兼業の場合、アプローチ方法がダイレクトメールの送付など、画一的な手法となってしまうのはやむを得ないが、ターゲットの中から重点ターゲットを100~200件程度設定し、そこだけでも電話や訪問といった個別アプローチを行うべきである。ダイレクトメールを送るだけでは、反応率が0.1%を切ることも珍しくないからである。
次に、代表的なターゲットリストの作成方法を以下に示す。
連絡先(住所・電話番号・FAX番号)に加え、代表者名、業種、直近の売上高がわかるデータの場合(1,000件)
帝国データバンク 262,500円
東京商工リサーチ 71,000円
比較的規模の大きな図書館であれば、「東商信用録」(東京商工リサーチ)、「帝国データバンク会社年鑑」(帝国データバンク)といった企業名簿、「全国各種団体名鑑」(原書房)といった団体名簿、「会社職員録」(ダイヤモンド社)といった役員名簿を蔵書している。これらを利用して、ターゲットリストを作成する。
こうした名簿からリストを作る場合、1枚ずつコピーを取る必要があるため、大量のリストを作成するのは難しい。したがって、あらかじめターゲットを絞り込んだうえで利用するのが効果的である。
業種と地域で絞り込み検索をした結果や、各種団体のホームページに掲載されている会員リスト、地図情報サイト・求人情報サイトなどから情報を入手する。この方法の場合、収集できるデータの項目にばらつきが生じることも多く、リストの作成に時間がかかることもある。
佐藤弁護士は、信用調査会社を通じてA市に本社を置く、資本金5000万円~3億円までの製造業で、従業員数が10名~300名の企業のリストを入手した。さらにこの中から、最初のターゲットにすべき企業を50社ピックアップし、インターネット検索などで企業情報を集めた。