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法律事務所における営業4

6. 提案

ヒアリング内容に基づいて、提案を行う。提案の内容は、大まかに分けると以下のようになる。

  1. ニーズの確認
  2. ニーズ間の優先順位の確認
  3. 競合を含む解決案の提示
  4. サービスの提案

重要なのは、一貫してターゲットの立場から提案するということである。また、提案相手が最終決済者でない場合には、提案相手に対するメリットと最終決済者に対するメリットを分ける工夫も必要となる。提案相手に対するメリットがなければ、提案を最終決済者に回してもらえないからである。

(例)顧問契約の場合
法務担当者→ 時間ばかりかかる契約書のチェックやリサーチは当事務所が行います。空いた時間で他の業務(戦略法務やコンプライアンス強化)ができますよ
最終決済者→ 法務関連業務に関するトータルコストが削減できますよ(年収500万円の正社員を1名正規雇用した場合、会社側の負担額は約570万円)

また、3.競合を含む解決案の提示と4.サービスの提案は分けて考えるべきである。提案するサービスに自信がないと、この部分をあいまいにしてしまいがちである。そうすると、潜在顧客の側からすると、強引にサービスを勧められている感じがしてしまう。

(例)

1.ニーズの確認
「営業部門からの契約書審査依頼が多い。いつも間際になって依頼を受けるので、審査業務に時間を取られ、他の業務ができない」
2.ニーズ間の優先順位の確認
契約書の審査をしたい>できるだけ早く行いたい>コストをかけたくない
3.競合を含む解決案の提示
法務部員の増員、派遣社員の利用、顧問契約、スポット契約…
4.サービスの提案
継続的に契約書の審査が多いようであれば、顧問契約を結んでいただくのがよいと思います。社員の増員や派遣の利用の場合に比べると、コスト的にも安く済むと思います。件数が少ない、あるいは重要なものだけチェックに回したいというのであれば、1件あたり1万円で行いますが、御社の場合、件数も多いようですので…。定型的な契約書のチェックであれば24時間以内に返答します。(競合との比較優位性の強調をあわせて行う)
テクニック

顧問契約で相談できる範囲に従業員やその家族を含めることによって、顧問契約に福利厚生的な意味を持たせることもできる

7. クロージング

クロージングとは、ターゲットに商品・サービスを購入することを決断させることである。クロージングのためのテクニックはいろいろあるが、ターゲットのニーズに沿った提案を行っていることが前提となる。これを怠っていると、「言いくるめられた」ということになりやすい。

テクニック

小さな「イエス」を積み重ねる。最初に「イエス」と言ってしまうと、それを覆すのは心理的に負担となる(ex.顧問契約をとりあえず1カ月で結んでもらう)
相手にとってベストだと考えられるプランだけでなく、少し高いプランをあわせて提案し、いったん「ノー」と言ってもらう。そこで譲歩すると、相手は断りにくくなる(相手に良くしてもらうと、自分もしなければと思う:返報性のルール)
いい面だけでなく、悪い面も提示する(両面提示)
他の利用者の声を示すことで、安心感を与える
期間限定、数量限定などで、相手を焦らせる(希少価値の原則)
あと一息の場合には、契約の障害となっている部分を確認し、「その部分がクリアできれば契約してもらえますか?」と詰めることも必要

先方にとってのメリットを意識しながら、丁寧に提案を行った結果、先方も必要性を感じてくれたようだった。「まず3カ月様子を見させてください」とのことで、期間限定の顧問契約となってしまったが、初めての営業はまずまずの結果となった。

8. 営業管理の必要性 – 不成約の結果を次に生かす

ターゲット1社ごとの営業行動は上記の通りであるが、当然のことながら、すべてのターゲットが成約に至るわけではない。ターゲットごとに、何が成約に至らない理由であったのかを検討し、次につなげることが重要である。

ヒアリングシートにアプローチが失敗した理由をできるだけ具体的に記録し、蓄積していく(例えば、受付で拒否された場合には、拒否された理由(時間がない、担当者不在など)も記録する)。ある程度事例が集積されてきたら、拒否理由ごとに対応策(切り返しトークの作成、提案内容の改善等)を立てていく。

また、日々の営業行動量を記録していくことも大切である(特に営業専任者を入れる場合)。営業プロセスごとに目標と実績を対比することで、営業行動のペースを調整することができるからである。
スランプに陥っている場合には、往々にして好調時とは異なる営業行動を行っているものである(訪問件数が少ない、資料作成ばかりしている、逆に予定を入れすぎている等)。